
カバーピクチャー / Journal of Materials Chemistry A / 21 October 2025, Issue 39
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/ta/d5ta02799c
Abstract
世界的なエネルギー需要の増加に伴い、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は高い効率と燃料の柔軟性により、クリーン水素エネルギー変換の有望な技術として注目されている。しかし、特に中温動作の金属支持型(MS)SOFCなどの次世代燃料電池では、カソード–電解質界面の不安定性が大きな課題となっている。従来のセリア緩衝層は、カソード–電解質反応を防ぐために不可欠であるものの、焼結密度の低さ、過剰な膜厚、1300 °Cを超える高温焼結の必要性などにより、産業的な応用に限界があった。
本研究では、約3 nmの超微細Gdドープセリア粒子を用いた低温製造法を開発し、900–1000 °Cで約99%の高密度かつ400 nm未満の超薄膜緩衝層を実現した。この技術によりSrおよびBaの相互拡散が抑制され、700 °Cで約0.02 Ω cm²という低い分極抵抗を達成し、さらに700 °Cで約1 W cm⁻²の高出力密度を実現した。全セルは200時間の定電流動作中も電気化学的安定性を維持し、10回の熱サイクル後にも劣化がほとんど見られなかった。
これらの成果は、SOFCの効率を向上させるためのスケーラブルでコスト効率の高いソリューションを提供し、エネルギー科学および技術分野に直接的な影響を与える。また、本研究は水素インフラ、電力網の安定化、産業脱炭素化に向けたSOFCの商業化を加速させ、世界的なクリーンエネルギー政策の推進に寄与するものである。